2013/07/19

子どもへのまなざし

1920年代のこと、ある幼稚園で先生が、初登園した一人の園児にこのように言いました、「あなたは画家になるかも知れないわ」と。

この園児の名はチャールズ・シュルツ。シュルツは当時、『ポパイ』のようなキャラクターが登場する人気コミックに夢中でした。しかし、青年になって、ある日「絵を描くのは好きですか?」という広告を見て、美術を学び始めます。そして何とセントポール・パイオニア・プレス紙に『リル・フォークス(Li’l Folks)』というコミックを掲載するようになりました。そうかと思うと、大手出版社エージェンシーに『ピーナッツ』と改名した連載コミックを持ち込み、この『ピーナッツ』が1950年、7つの新聞でデビューを果たして、1999年までに世界中の2600に及ぶ新聞各紙で同時掲載されるまでになりました。そしてシュルツはコミック作家にとって最高の栄誉であるルーベン賞を2回授与され、1978年の「国際的コミック作家」に選ばれるまでになったのです。

ちなみに、シュルツ・ファンの間で「いちばん好きな登場人物」はスヌーピーだそうですが、あの白黒のビーグル犬は、シュルツが幼かった頃、一家に贈られて来た小さな毛むくじゃらの犬がモデルであったと言われます。そして、その犬を描いたスケッチを見て、幼稚園の先生があの予言をし、しかも見事にその予言は的中したのでした。

親あるいは大人たちの、子どもへのまなざしが問われているように思えます。大人の安心や先の満足のために子どもを急かすのではなくて、今の子どもをただ愛し、子どもの特長を見いだそうとするまなざし。そのまなざしを持つ限り、我が子に苛立つことは無い筈です。そして我が子のみならず、CSの子どもたちにも、それぞれの特長を見いだしたい、と願うものです。ゆとり教育は高等学校で施行されるだけになってしまいましたが、子どもへのまなざしには、上述のような意味での“ゆとり”が欠かせないのではないでしょうか。

「もし、ぼくが次の世代へのプレゼントを贈るとしたら、『自分自身を笑い飛ばせる才能』を贈ると思うな」(チャールズ・シュルツ/1922 - 2000)。