2016/11/06

役に立たなくても良い

大隅良典さんという東京工業大学の栄誉教授がノーベル医学・生理学賞を受賞されました。ノーベル賞とは、ダイナマイトの発明者として知られるアルフレッド・ノーベルの遺言に従って1901年から始まった世界的な賞です。物理学、化学、医学・生理学、文学、平和および経済学の6分野で顕著な功績を残した人物に贈られます。大隅さんの受賞理由は、細胞が自らたんぱく質などを分解してリサイクルする「オートファジー」(自食作用)と呼ばれる仕組みを解明したこと。ただし、それは何年も前になさった研究だったそうです。ともかく、日本人がノーベル賞を授与されるのはこれで3年連続。自国びいきかも知れませんが、大したものだと感心してしまいます。


受賞後の会見をテレビでご覧になった方もあるでしょう。総理大臣や文部科学大臣からの電話で中断することもありましたが、ボクの心に残ったのは、最後の最後に女性記者の質問に対する返答でした。「私は『役に立つ』という言葉はとても社会をダメにしていると思っています。…本当に役に立つことは10年後かも20後かも知れない。そういう何か、社会が将来を見据えて、科学を1つの文化として認めてくれるような社会にならないかなということを強く願っています」。

この返答を聴き、ボクが思い出したことがいくつかあります。その内の一つは2002年にノーベル物理学賞を受けた小柴昌俊さんの言葉です。小柴さん(横須賀市立諏訪小学校出身)はご自分の研究が将来どんな役に立つのかと質問されると「まったく役に立たない」と答えたのです。あれは痛快でした。あのときに感じた心地よさを、別の切り口から大隅さんに語って頂いた気がします。

役に立つかどうか、そんなことを基準にする生き方を捨てようではありませんか。むしろ、誰からも役に立たないと思われているものに大きな価値を見出だすことのできる“心の目”を持ちましょう。ただし、そのような目は神さまが与えてくださると信じて。