2017/09/02

宗教改革とハロウィン

世界史の教科書に「ルター」というひとの名前がありました。カトリック教会の修道士でしたが、33歳のときに95箇条の提題を発表し、歴史に「プロテスタント」(=抗議者)という新しい流れを引き起こすことになった人です。その提題の内容はカトリック教会の旧来の教えを反駁するものでした。「贖宥状(=免罪符)を購入して他人の功徳に与ろうとしても、それでひとが救われるのではない。ひとは善い行いによって救われるのではなく、ただ信仰によってのみ救われる。だから、人は皆『イエス=キリストの命の代償によって罪を赦された』と信じれば、誰でも神さまに『正しい人』と見なして頂けるのだ」、そうルターは主張したのです。すると、ドイツを初めヨーロッパ各地でこれが支持され、ついには世界中に大きな影響を与えることになりました。それが宗教改革です。

ところが、おもしろくないのがカトリック。ルターが提題を発表した15171031日がヨーロッパでは「万聖節」(ハロウィン)という祭日であったことから、そのお祭りを教会行事として導入し、ルターの改革の記念日に水をさそうと致します。つまり、元はキリスト教のお祭りではないハロウィンを、カトリック教会が利用したのでした。ちなみに、このハロウィンは仏教で言う「お盆」のようなもの。元来、カトリック教会はマリア崇敬なるものがあったり、レクイエム(鎮魂歌)という死者への語り掛けも奨励されたりしている教会ですから、ハロウィンを自分たちの暦に取り入れることには何の抵抗もありませんでした。けれども、それらのことは聖書にはまったく書かれていないことなので、聖書のみを「書かれた神の言葉」と見なすプロテスタントの教会では、マリア崇敬もしないし、レクイエムも歌わないし、ハロウィンを祝うこともしない、というわけです。

しかし、ルターの改革から500年を経て、カトリックとプロテスタントという二つの枝に分かれたお互いは、幹なるイエス=キリストを信じる信仰においては一つであることを積極的に確認するようになりました。例えば、既にカトリックは贖宥状をやめていますし、最近ではルターが作曲した讃美歌(神は我が砦)でさえも歌うようにもなっています。また、プロテスタントの招きを受けて一緒に聖書の翻訳をするようにもなりました。横須賀小川町教会で使われている『聖書 新共同訳』(日本聖書協会)は日本におけるその産物です。宗教改革500年、教派の違いを超えて皆、共に、幹なるキリストに連なる共同体であることを覚えたいと思います。

え?ハロウィンパーティーをしても問題ないか、ですって??いいですよ。教会ではしませんが、ご家庭で楽しむのはまったく問題ありません。でも、そこでは鎮魂歌を歌うのではなく、ぜひ招待客の皆さんに、ルターの95ヶ条の提題の話をしてあげてください!